注射薬による遺伝子治療により、レーバー先天性黒内障(LCA)患者の視力や生活の質(QOL)が改善したことを確認したとする第1/2相臨床試験(BRILLIANCE)の結果が報告された。米フィラデルフィア小児病院の小児眼科医であるTomas Aleman氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月6日掲載された。

LCAは、先天性の視覚障害を引き起こす遺伝性網膜疾患で、米国では毎年、10万人当たり2〜3人の新生児がLCAと診断される。LCAで生まれた児の多くは生まれつき盲目で、そうでない児も生後6カ月頃までに視力を失い始める。LCAは、中心体タンパク質290(CEP290)遺伝子の変異が原因で生じる。網膜の桿体細胞と錐体細胞は視覚信号を検出し、それを脳が受け取るための電気信号に変換する役割を担っているが、CEP290遺伝子に変異があるとその機能が障害されるのだという。CEP290遺伝子変異は、生後10年間に発症する遺伝性の盲目の主因であると研究グループは説明している。

研究グループは今回の研究で、LCAを遺伝子レベルで治療するためにCRISPR-Cas9という遺伝子編集ツールキットに着目した。CRISPR-Cas9は、ゲノム中の任意の領域を改変できるツールで、遺伝子のノックアウトだけでなくノックインも可能である。研究グループは、17〜63歳の成人12人(年齢中央値37歳)と9歳および14歳の小児2人の視力の悪い方の目に、この技術を用いて作成された治療薬(EDIT-101)を単回投与した。その後1年間は3カ月ごとに、その後の2年間はもう少し頻度を下げて試験参加者の経過観察が行われた。

その結果、14人中11人の参加者(79%)で、測定された4つの視力アウトカムのうちの1つ以上、6人(43%)では2つ以上に改善が認められた。また、6人(43%)は視力に関連したQOLの改善を報告した。さらに、4人(29%)では、図表上の対象物や文字を識別する能力が改善するなど、臨床的に意味のある視力の改善が確認された。安全性に関しては、治療や処置に関連した有害事象の発生や、薬剤の用量制限が必要になるような毒性作用は確認されなかった。

論文の筆頭著者である、米ハーバード大学医学大学院および米Mass Eye and EarのEric Pierce氏は、「何人かの試験参加者から、ついに皿の上の食べ物が見えるようになったとの感激の声が聞かれた。これは素晴らしいことだ。これらの人は、処置前は視力検査表の線も読めず、治療の選択肢もなかった。多くの遺伝性網膜疾患患者にとって、それが悲しい現実だ」と話す。同氏はまた、「この治療により最も大きなベネフィットを得るのが誰なのかを明らかにするにはさらなる研究が必要だが、初期の結果は有望だとわれわれは考えている」と述べている。

この注射薬を開発した米マサチューセッツ州ケンブリッジのバイオテクノロジー企業Editas Medicineの最高医学責任者であるBaisong Mei氏は、「CRISPR-Cas9ベースの遺伝子編集治療薬を安全に網膜に投与し、臨床的に意味のある結果を得られることが実証された」とMass Eye and Earのニュースリリースで述べている。なお、Editas Medicine社は、今回の臨床試験に資金を提供していたが、実験的治療法の開発に協力する他の商業パートナーを探すために2022年11月にそれを一時中断した。研究グループは、同社と協力し、他の商業パートナーと共同でさらに大規模な臨床試験を実施することを模索している。(HealthDay News 2024年5月6日)

https://www.healthday.com/health-news/eye-care/gene-therapy-improves-vision-in-people-with-inherited-blindness

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