エーザイ株式会社と米Biogen Inc.が共同開発したアルツハイマー病(AD)の新薬「レカネマブ」が、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で製造販売承認を了承され、今後、厚生労働省に正式承認されることになったことについて、科学技術振興機構(JST)が運営する科学技術の総合サイト「Science Portal」からニュース記事をご紹介いたします。
「レカネマブ」はアミロイドβの脳内異常蓄積がADの原因の1つとする「アミロイドカスケード仮説」に沿って開発された疾患修飾薬です。従来の抗認知症薬が症状緩和を目的とするのに対し、レカネマブは、ADの進行を抑制することが期待されています。投与対象はアミロイドβが脳内に蓄積し、生活に支障が出始めた軽度の患者とその前段階の軽度認知障害(MCI)とされています。そのため、その対象となる患者の見極めが必要となり、早期発見・診断が非常に重要となります。
「レカネマブ」の承認は、早期アルツハイマー病(MCIや軽度の認知症)を対象とした臨床試験のデータに基づくもので、薬効成分を含まない偽薬を投与したプラセボ群と比較して、18カ月間で認知機能の低下を27%遅らせる効果などが確認されました。
米国では今年1月に迅速承認、7月に米食品医薬品局(FDA)で正式承認されました。
高齢化が進み認知症患者が増える中、医療のみならず経済への大きな影響が懸念されています。発症早期あるいは発症前の段階で、原因となっている物質を標的に介入ができる疾患修飾薬が承認されたことにより、さらに大きなベネフィットを得られる可能性があります。今後、治療を必要とする患者が広く使用できるようにするため、早期に保険適用されることが期待されています。
出典:Science Portal「厚労相、エーザイのアルツハイマー病新薬を承認へ 原因タンパク除去し進行遅らせる効果は初」(2023年8月22日)科学技術振興機構(JST)
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20230822_n02/
シスメックスのコーポレートサイトでは、「微量の血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬を発売」についてのお知らせを掲載しております。