ベリー類やお茶をたくさん摂取すれば、加齢に伴う認知機能の低下速度を遅らせることができるかもしれない。米ラッシュ大学医療センターのThomas Holland氏らが、900人以上の成人を対象に実施した研究で、抗酸化物質のフラボノール類を含む食品や飲料は、高齢者の脳に有益な影響をもたらすことが示された。フラボノール類は、ベリー類などの果物や緑色の葉物野菜、茶、ワインなどに含まれている。この研究結果は、「Neurology」に11月22日掲載された。

この研究でHolland氏らは、認知症がない60〜100歳の研究参加者961人(平均年齢81歳)のデータを収集した。平均6.9年にわたる追跡期間中に、これらの参加者は年に1回の頻度で食事に関する質問票に回答しており、1日当たりのフラボノール類の摂取量に応じて5群に分けられた。参加者のフラボノール類の1日当たりの平均摂取量は、最も多い群で15mg(葉物野菜で約1カップ分に相当)、最も少ない群で5mgだった。認知機能については、参加者に対して1年に1回の頻度で実施された19種類の認知機能検査の結果を基に、包括的な認知機能スコアを算出した。

その結果、年齢や性別、喫煙の有無を考慮しても、1日当たりのフラボノール類の摂取量が最も多い群では、最も少ない群に比べて記憶力の低下速度が遅いことが示された。また、フラボノール類の種類(ケンぺロール、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチン)で分類して、それらの含有量の多い食品を調べたところ、ケンぺロールはケール、豆類、茶、ホウレンソウ、ブロッコリーに、ケルセチンはトマト、ケール、リンゴ、茶、ミリセチンは茶、ワイン、ケール、オレンジ、トマトに、イソラムネチンはナシ、オリーブ油、ワイン、トマトソースに多く含まれていることが判明した。

Holland氏は、「フラボノール類は抗炎症物質であるとともに抗酸化物質でもある。フラボノール類が含まれるこれらの食品はフリーラジカルを破壊し、脳、心血管系や腎臓、肝臓などの臓器の細胞を酸化のダメージから守ってくれる」と説明。また、同氏は、「フラボノール類はサプリメントからではなく食品から摂取するのが最も良い方法だ。食品からの方が、より多様な栄養素を摂取することができるからだ。サプリメントは、その名の通り、栄養補助食品として健康的な食事を補うものと捉えるべきだ」との考えを示している。

今回の研究では、フラボノール類の摂取量の多さと認知機能の低下速度の遅さとの間に関連が認められたが、Holland氏は、「これらが因果関係にあることを証明したわけではない」とし、慎重な解釈を求めている。また、摂取した食品に関する調査は人々の記憶に基づくものであるため、必ずしも正確ではない可能性にも言及している。

この研究には関与していない、米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスの上級臨床栄養士であるSamantha Heller氏は、「植物性食品は、人々の健康に大きなベネフィットをもたらす効果的な栄養素の宝庫だ」と話す。

今回の研究は、食事に含まれるフラボノール類と認知機能との関連について着目したものだが、Heller氏は、「フラボノール類のみを摂取すれば良いという話ではない」と指摘。「われわれが摂取している食品にはフラボノール類以外にも、食物繊維やビタミン、ミネラルなどさまざまなファイトケミカル(植物栄養素)が含まれている。これらの栄養素の相乗的な効果が、健康にベネフィットをもたらす」と説明している。さらに、「おそらく、この研究で認知機能に最大のベネフィットを得たのは、植物由来の食品の摂取量が多かった人たちだと思う。ただ、その点については研究では検討されなかった」としている。

フラボノール類のみでは認知機能の低下を抑えるには不十分であるという点に関しては、Holland氏も同意見だ。同氏は、「心身の健康を維持する最善の方法は、果物や野菜を含む多様な食品で構成された食事を取り、運動するなどの健康的な生活習慣を心がけることに加え、日々新しいことを学ぼうと挑戦し続け、脳を鍛えることだ」と話す。さらに、「睡眠やストレス軽減といったことが全て合わさることで、全般的な健康に有益な影響がもたらされる」と説明している。(HealthDay News 2022年11月28日)

https://consumer.healthday.com/brain-foods-2658727996.html

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