米国人の15%に、生涯のある時点で膵嚢胞が生じる。こうした嚢胞の大半は良性だが、一部ががん化する可能性もある。膵臓がんは致命的になることが多いため、一人でも多くの人の命を救うためには、良性の嚢胞とがんになる可能性のある嚢胞を正確に鑑別する検査が鍵になるといっても過言ではない。そうした中、米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)ヒルマンがんセンターのAatur Singhi氏らが、同氏らが開発した遺伝子検査により、良性の嚢胞と悪性の嚢胞を正確に鑑別できたとする研究結果を発表した。この研究の詳細は、「Gastroenterology」に10月6日掲載された。

Singhi氏は、「膵臓がんはまれではあるが致死的な疾患で、ほとんどの患者は診断から数年のうちに死亡する。膵臓がんの転帰を改善できるかどうかは、より良い治療法を見つけられるか、あるいは早期発見できるかにかかっている。今回の研究はその両方に焦点を当てたものだが、特に早期発見に対する取り組みの改善を目指した」と話す。

Singhi氏らは2017年に発表した研究で、良性の嚢胞(非粘液性嚢胞)と悪性になり得る嚢胞(粘液性嚢胞)を、膵嚢胞に関わる遺伝子を解析することで鑑別する、PancreaSeqと呼ばれる遺伝子検査法について報告していた。今回の研究では、この検査で使う遺伝子パネルに含まれる遺伝子を22種類に増やした拡張版のPancreaSeqが臨床の現場で使えるか否かを確認するために、31施設の1,832人の患者から採取した膵嚢胞液の分析を行い、1,216人(66%)の患者の転帰を2年間(中央値23カ月)追跡した。

その結果、MAPK(分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)経路に関わる遺伝子(KRAS、BRAF、NRAS)とGNAS遺伝子の変異に基づいた場合には、PancreaSeqは90%の粘液性嚢胞を検出し、間違って陽性と判定したケースはなかったことが明らかになった(感度90%、特異度100%)。また、粘液性嚢胞を対象にした場合には、上記遺伝子とTP53/SMAD4/CTNNB1、およびmTOR(MTOR)関連遺伝子の異常に基づくと、がんに進展した嚢胞の88%を特定し、特異度は98%であった。さらに、PancreaSeqに顕微鏡観察による嚢胞の細胞病理学的評価を組み合わせると、感度は93%に向上し、特異度は95%と高いままであった。このほか、PancreaSeqは、非粘液性嚢胞や、P-NETSと呼ばれる膵神経内分泌腫瘍の検出にも優れていることも確認された。これらの腫瘍は通常は良性だが、膵臓から体の他の部分に広がると致命的になる可能性がある。

Singhi氏は、「これらの結果に基づき、膵嚢胞の遺伝子検査が、膵嚢胞の診断と膵臓がんの早期発見のための国際的なコンセンサスガイドラインに組み込まれる準備は整ったといえるだろう」と述べる。その上で、「われわれは、PancreaSeqにより膵臓がんの早期発見率が改善するだけでなく、この検査により非がん性の嚢胞に対する過剰治療や不必要な手術が回避されるようになることを期待している」と話している。

なお、この拡張版の検査のPancreaSeqは現在、米国内の患者だけでなく海外の患者も利用可能だ。手順は、サンプルを地元のセンターで採取し、UPMCに送って分析してもらうというものだ。研究グループは、2022年末までに、幅広い保険適用の承認が下りることに期待を寄せている。(HealthDay News 2022年10月10日)

https://consumer.healthday.com/b-10-6-new-test-of-pancreatic-cysts-might-boost-cancer-detection-2658398967.html

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