一部の前立腺がん患者にとって、コーヒーを飲むことは単に気分転換になるだけでなく、生存期間の延長につながるかもしれない。その可能性を示唆するデータが報告された。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJustin Gregg氏らの研究によるもので、詳細は「European Urology Oncology」に8月19日掲載された。

論文の筆頭著者であるGregg氏は、「研究はまだ初期段階だが、遺伝的にカフェインの代謝速度が速い前立腺がん患者では、コーヒー摂取量と生存期間との間に関連があることが分かった。この関連をより深く突き詰めていく作業に、非常に興奮している。前立腺がんと診断された人々の生活スタイルと予後との関係を、さらに調査する必要がある」と語っている。

Gregg氏によると、診療中に患者から受ける質問の中で最も多いのが、「どうすればがんを予防したり、進行を抑制できるか?」という内容だという。そして、これまでの研究から、健康的な食習慣や身体活動習慣ががん罹患リスクを下げる可能性が示唆されているものの、「がんの診断を受けた後に進行を抑制するための生活習慣については、具体的な推奨事項として示せるほどのエビデンスは得られていない」と説明する。こうしたなか同氏は、コーヒーが抗酸化・抗炎症作用を介してさまざまな健康上のメリットをもたらす可能性を示した報告と、カフェインの代謝が遺伝子型によって異なることを示した報告に着目し、今回の研究のアイデアを得たと述べている。

Gregg氏らは、米国と欧州およびオーストラリアで行われた7件の研究に参加した前立腺がん患者5,727人のデータベースを用いて、コーヒー摂取量とカフェイン代謝速度に関係のあるCYP1A2遺伝子型、前立腺がん特異的生存期間(PCSS)などとの関連を検討した。

その結果、コーヒー摂取量が1週間に3杯以上で1日に2杯以下の人と、1日に2杯以上飲む人を比較すると、全体解析ではPCSSに有意差はなかった。ところが、CYP1A2の遺伝子型がAAでありカフェイン代謝が速いタイプの人では、コーヒー摂取量が多い群でPCSSの延長が認められた〔ハザード比0.67(95%信頼区間0.49~0.93)、P=0.017〕。一方、CYP1A2遺伝子型がAC/CCでありカフェイン代謝が速くない人ではこの関係は非有意であり(P=0.8)、CYP1A2遺伝子型で層別化した場合の交互作用が有意だった(P=0.042)。Gregg氏は、「さらなる研究によって将来的には、前立腺がんを診断された男性の一部に対する治療を強化するために、何を積極的に摂取すべきかといったアドバイスが可能になるかもしれない」と語っている。

この研究報告について、米国がん協会(ACS)のWilliam Dahut氏は、「前立腺がんでは診断を受けてから何年も、時には何十年も生きることになり、その間にコーヒー摂取習慣が変化する可能性がある。よって、コーヒー摂取量と予後との関連は簡単に結論を出すことができず、論文の著者らもその点を研究の限界点として認めている」と論評。その上で、「コーヒー摂取が健康上のメリットにつながるという理論的な根拠はいくつか挙げることができる。しかし、『前立腺がんの診断後にはコーヒーを飲み始めるべき』と言うには、まだ情報が十分でない」と述べている。

Dahut氏によると、コーヒー以外にも、トマトや牛乳などのさまざまな食品について、がんの予防や進行抑止に役立つかどうかを調べる目的の研究が行われているという。しかし、調理方法の違いや、一緒に摂取する食品の影響の除外が難しく、解析は一筋縄にいかないとのことだ。「食品は実際にがんに影響を与える可能性があるが、研究は非常に困難だ」と同氏は語っている。(HealthDay News 2022年9月19日)

https://consumer.healthday.com/9-20-coffee-might-give-some-men-an-edge-battling-prostate-cancer-2658211389.html

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