Sonia Dhaliwalさんは、子どものアトピー性皮膚炎がどれほどひどくなり得るかをよく知っている。というのも、娘のAriah Nihal Khanさんが赤ちゃんのときから重症のアトピー性皮膚炎に苦しんできたからだ。Ariahさんのアトピー性皮膚炎の症状は3歳になるまで執拗で身体を消耗させるものだった。顔面や瞼、手や膝などに皮疹や変色が広がり、「ひどい痒みからかきむしってあちこちから出血した状態で泣き叫びながら起きてしまうこともあった」とDhaliwalさんはいう。

「彼女は寝不足で、食事も十分に取れておらず、不機嫌だった。このことは彼女の感情や性格にも大きな影響を与えた。小児科医からは最初にローションが勧められ、次は処方薬が出された。たくさんの薬を処方されたが、どれも治療の役には立たなかった」とDhaliwalさんは振り返る。

しかし最終的に、新たな臨床試験で低年齢児にも有効かつ安全であることが確認されたモノクローナル抗体医薬品のデュピルマブ(商品名デュピクセント)によってAriahさんは救われた。デュピルマブは、リジェネロン社とサノフィ社が共同で開発したもので、臨床試験もこれら2社の資金提供により実施された。「The Lancet」に9月17日発表されたこの臨床試験の結果を受けて、米食品医薬品局(FDA)はデュピルマブの適応年齢を拡大し、同薬は未就学児にも使用できる初めての生物学的製剤となった。

臨床試験には、北米と欧州の31施設でこの試験に登録された、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に罹患している生後6カ月~6歳未満の小児197人が参加した。対象児は、4週間ごとに16週間、デュピルマブまたはプラセボを投与する群に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、投与から16週時点での皮膚症状重症度の全般評価(IGA)でスコア0(ない)〜1(ほとんどない)を達成した小児の割合、副次評価項目は、投与から16週時点でアトピー性皮膚炎評価スケールのEASIで75%以上の改善を達成した小児の割合とした。

その結果、デュピルマブ投与群ではプラセボ群と比べて、IGAスコア0〜1を達成した小児の割合と(28%対4%)、EASIで75%以上の改善を達成した小児の割合(53%対11%)が有意に高かった。また、デュピルマブ投与により生じた重大な副作用はなかったという。

本論文の筆頭著者である、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のAmy Paller氏は、「われわれは、低年齢児にこの薬剤を使った場合も、成人やより年齢の高い小児と同じように効果が得られ、かつ安全であるかどうかを確認しなくてはならなかった」と説明。「低年齢児においても成人と同様の安全性の追跡データが得られ、驚きはなかったが安心した」と話す。

Paller氏によると、アトピー性皮膚炎の症例の多くは2歳から症状が出始め、5歳までの発症例が85~90%を占めているため、この結果は重要だという。より軽症のアトピー性皮膚炎の低年齢児では、たっぷりと保湿剤を塗り、皮疹が悪化した場合には薬用クリームや軟膏、特に作用の弱い局所ステロイド薬を使えば十分にコントロールできる。しかし、中等症~重症のアトピー性皮膚炎の低年齢児では、より強いステロイドのクリームや軟膏を使っても皮膚の状態を良好にコントロールできない患者の割合が最大で40%に上るという。

Ariahさんもその1人だった。そこでDhaliwalさんは専門家を探し、Paller氏に出会った。同氏は、当時6歳以上の小児患者に処方していたデュピルマブの6歳未満の小児を対象とした臨床試験のことをDhaliwalさんに話し、Dhaliwalさんは試験への参加を決めた。臨床試験は盲検下で行われたため、DhaliwalさんはAriahさんに投与されている薬剤がデュピルマブなのかプラセボなのかは分からなかった。しかし、最初の注射から2週間以内にAriahさんに大きな変化が現れたという。「そのときまでに皮膚の症状のほぼ80%が消失していたと思う。彼女は全くの別人になった。それは驚くべき変化だった」とDhaliwalさんは言う。

米マイアミ大学ミラー医学部のRobert Kirsner氏は、試験の結果について、「歓迎すべき知らせであり、患者やその家族、治療に当たっている医師たちにとって、ゲームチェンジャーとなる可能性がある」とコメントしている。(HealthDay News 2022年9月20日)

https://consumer.healthday.com/9-20-drug-may-be-effective-new-way-to-ease-young-kids-eczema-2658212538.html

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写真:左からNihal Nazarさん、Sonia Dhaliwalさん、彼らの娘のAriah Nihal Khanさん Photo Credit: Nihal Nazar

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