超加工食品の食べ過ぎが認知症のリスクを高める可能性を示唆するデータが報告された。天津医科大学(中国)のHuiping Li氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に7月27日掲載された。

超加工食品は一般的に、糖分や脂肪分、塩分を多く含み、タンパク質や食物繊維が少ない。具体的には、フライドチキン、ソーセージ、ケチャップ、マヨネーズ、フレーバーヨーグルト、フレーバーシリアル、菓子パン、炭酸飲料、菓子、アイスクリームなどの中に、該当するものが多い。Li氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」のデータを用いて、これら超加工食品の摂取量と認知症発症リスクとの関連を検討した。

解析対象は、ベースライン時に認知症がなく、24時間の食事摂取状況を把握する調査に2回以上参加した55歳以上の成人7万2,083人。超加工食品の摂取量で全体を4群に分けると、第1四分位群(超加工食品摂取量が少ない下位4分の1)は、1日225g(摂取量の9%)の超加工食品を摂取していた。それに対して第4四分位群(超加工食品摂取量が多い上位4分の1)は、1日814g(同28%)を摂取していた。

71万7,333人年(追跡期間中央値10.0年)の追跡で、518人が認知症(287人がアルツハイマー病、119人が血管性認知症)を発症した。認知症発症に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、家族歴など)を調整後、超加工食品の摂取量が10%多いごとに認知症発症リスクが25%高くなるという関連が認められた〔ハザード比(HR)1.25(95%信頼区間1.14~1.37)〕。病型別では、アルツハイマー病がHR1.14(同1.00~1.30)、血管性認知症がHR1.28(1.06~1.55)であり、いずれも有意な関連があった。

これらの結果を基に、人々が摂取している超加工食品の10%を未加工や低加工の食品に置き換えたと仮定すると、認知症のリスクは19%低くなると推計された〔HR0.81(同0.74~0.89)〕。ただし、この研究は超加工食品の摂取量と認知症リスクとの間に関連があることを示しているが、因果関係を証明するものではない。

この論文について、米マウントサイナイ認知健康センターのSam Gandy氏は、「近年、心臓に良い食事とライフスタイルが、認知症のリスクを抑制するための最善の方法であることを示すエビデンスが増えている。新たに報告された研究結果もそれらのエビデンスと一致している。ただ、心臓の健康に良い食品のメリットではなく、超加工食品のリスクに焦点を当てていることは、この研究の目新しさと言える」と評価している。

一方、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのSamantha Heller氏は、「超加工食品の摂取と、肥満、2型糖尿病などの慢性疾患や心臓病、ある種のがんの発症リスクとの関連は以前から知られていた。詳しいメカニズムは不明ながら、超加工食品の摂取が認知症のリスク上昇と関連していたとしても驚くべきことではない」と話す。その上で、「超加工食品は、それらへの食欲を高めることも狙って作られており、多くの家庭で、果物、野菜、豆類、全粒穀物などの健康的な食品に取って代わりつつある。塩分、糖分、飽和脂肪酸が多く、食物繊維が少ない超加工食品は、肉体的かつ精神的な健康にも良くないレシピだ」と解説する。

Heller氏は、超加工食品から健康的な食品への切り替えについて、「調理方法を学ぶことは、最初は気が遠くなるほど大変だと感じるかもしれない。しかし、無料のレシピやリソースがオンライン上にあふれている」と、身近な情報の活用を促している。また、「われわれの患者を対象に行った研究では、超加工食品を減らして生鮮食品を多く食べるようになると、超加工食品を『おいしい』と思えなくなり、魅力が低下することが明らかになった」とのことだ。

他方、米ボストン大学のMaura Walker氏とNicole Spartano氏は、本論文に対する付随論評を寄せ、今回の研究での超加工食品の定義に一考の余地があることを指摘している。両氏は、「調理方法が食品の栄養価に影響を与える可能性があり、研究参加者の自己申告のみに依存しない、より精密な食事調査に基づく研究が必要ではないか。食習慣を正確に把握することは困難だが、今後は調理方法のほかに、例えば、摂取タイミング、食べ合わせなどの影響の理解も欠かせない」と述べている。(HealthDay News 2022年7月28日)

https://consumer.healthday.com/7-28-diets-heavy-in-ultra-processed-foods-could-harm-the-brain-2657734374.html

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