肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれる病態を抱えている人では、今後10年間での心不全リスクが上昇するというメタアナリシスの結果が発表された。ヴェローナ大学(イタリア)医学部のAlessandro Mantovani氏らによるこの研究の詳細は、「Gut」に7月25日掲載された。

Mantovani氏らによると、国を問わず、成人の約30%がNAFLDに罹患しているものと見積もられている。さらに悪いことに、過体重や肥満の増加に伴い、NAFLDの有病率は今後10年間で急増することが予想されているという。

今回のMantovani氏らの研究では、2022年3月までに発表された、米国、英国、韓国、スウェーデン、フィンランドの5カ国で実施された、総計1124万2,231人を対象にした11件の長期研究をレビューし、NAFLDと心不全発症との関連を検討した。対象者の平均年齢は55歳で50.1%が女性、平均BMIは26.4と、過体重だが肥満ではないとされる数値であった。また、対象者の26.2%(294万4,058人)は、すでにNAFLDを有していた。

中央値で10.0年に及ぶ観察期間中に、9万7,716人が心不全の診断を受けていた。解析の結果、年齢、性別、民族、体脂肪、糖尿病、高血圧、その他の一般的な心血管リスク因子の有無にかかわらず、NAFLDがあると、今後10年以内に心不全を新規発症するリスクが50%上昇することが明らかになった。さらに、心不全の発症リスクは肝疾患の重症度にも関連し、特に広範囲の肝線維症(肝組織の瘢痕化)があると、リスクは76%上昇していた。ただし、この所見は、11件の研究のうちの2件のみに基づくものであった。

研究グループは、今回の研究の限界として、「観察研究であるため、NAFLDと心不全発症との因果関係を明らかにできない」と述べている。その上で、心不全発症に関わる可能性があるメカニズムとして、NAFLDがインスリン抵抗性を悪化させ、プラーク形成を促進し、炎症性物質と血栓形成に関与する分子を放出することを指摘している。また、血糖値を下げる最新の糖尿病薬が心不全による入院リスクを低減させる可能性が示されていることにも言及し、この点からもNAFLDと心不全発症との関連に対する関心が高まりつつあると話す。

研究グループは、「今回の研究から得られた知見は、これまでに発表された研究結果に一致するものだ」と述べ、「NAFLDのある人は、慎重な経過観察が必要だ」と話している。(HealthDay News 2022年7月26日)

https://consumer.healthday.com/b-7-26-2657712504.html

Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

本記事は医療関係者専用記事です。

この先は、日本国内の医療関係者(医師・看護師・検査技師・栄養士・薬剤師など)の方に
当社商品に関する情報を提供することを目的としたページです。
日本国外の医療関係者および
一般の方に対する情報提供を目的としたものではございません。

あなたは医療関係者ですか?

  • はい
    ※医療関係者専用記事を閲覧する
  • いいえ
    ※TOPへ戻る

This article is a sponsored article by
''.