開発段階にある経口薬SAGE-718により、アルツハイマー病(AD)による軽度認知症や軽度認知障害(MCI)の患者の遂行機能や学習能力、記憶力に著しい改善が認められたとする第2相臨床試験(LUMINARY試験)の結果が報告された。米Sage Therapeutics社で初期臨床開発のバイスプレジデントを務めるAaron Koenig氏らによるこの研究の詳細は、米国神経学会年次総会(AAN 2022、4月2〜7日、米シアトル)で発表された。

SAGE-718はN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の陽性アロステリック調節因子(PAM)で、NMDA受容体の機能障害に関連して生じる認知障害の潜在的な治療薬として開発が進められている。目下、パーキンソン病とハンチントン病の思考障害に対する同薬剤の治療効果を検討する臨床試験も実施中である。

LUMINARY試験は、MCIまたはADによる軽度認知症の患者26人(50〜80歳、女性69.2%)に3mgのSAGE-718を1日1回、14日間投与し、認知機能がどの程度改善するのかを調べたもの。対象者には、MCIを検出するための検査であるMontreal Cognitive Assessment(MoCA)のスコアが15〜24点の者を含めた。対象者の認知機能は、包括的な認知機能テストバッテリーを用いて評価された。

試験開始から14日目に対象者の認知機能を検査したところ、遂行機能、学習、記憶に関する複数のテストで改善が認められた。また、試験開始から28日目にはMoCAスコアが2.3点上昇し、有意な改善が確認された。さらに、SAGE-718は概して忍容性が高く、7人の対象者に8件の軽度〜中等度の有害事象が生じたものの、重大な有害事象や死亡例は確認されなかった。

Koenig氏は、「患者にとって意味のある症状の改善を、これほど短期間で確認することができて、われわれは興奮している」と話す。

ADのいくつかの症状、例えば記憶障害などの一時的な緩和に役立つ薬剤は既に存在する。しかしKoenig氏によると、それらは脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やすことを目的にしたコリンエステラーゼ阻害薬であり、主に同疾患の後期に使用するものである。同氏は、「これらの薬剤は、ADの進行を遅らせるのには役立たない。ADとは進行性の疾患であり、段階を経るごとに重症化して症状が顕著になっていく。そのため、治療を成功させるには、おそらくは初期段階で治療を行うことが鍵となる」と話す。

米アルツハイマー病創薬財団の創設時エグゼクティブディレクター兼最高科学責任者のHoward Fillit氏は、「SAGE-718は、NMDA受容体を標的にした興味深い薬剤であり、大きな可能性を秘めている。NMDA受容体の機能を調節するというこの薬剤の作用機序は、これまでにない新規のものであり、有効性も優れている」とコメント。「本研究は小規模である上に試験期間も短かったため、さらなる研究で結果を確認する必要はあるが、今回の研究で、今後を楽観視できるような研究結果が得られたと思う」と語っている。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年4月1日)

https://consumer.healthday.com/4-1-early-promise-from-experimental-drug-to-treat-alzheimer-s-2657051038.html

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