新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種の安全性をより強固にする研究結果が報告された。この研究によると、COVID-19罹患によりまれに生じる神経学的イベントのリスクが、新型コロナワクチン接種により高まることはないという。英オックスフォード大学Nuffield Department of Orthopaedics, Rheumatology and Musculoskeletal SciencesのDaniel Prieto-Alhambra氏らによるこの研究の詳細は、「The BMJ」に3月16日掲載された。

英アストラゼネカ社製または米ファイザー社製の新型コロナワクチン接種後に末梢神経障害であるギラン・バレー症候群の発症が報告されたことを受けて、欧州医薬品庁(EMA)は、これらのワクチンのまれな副作用にギラン・バレー症候群を含めている。しかし、現時点では、新型コロナワクチン接種後のギラン・バレー症候群やその他の免疫介在性神経疾患の発症リスクに関して統一見解を得るには至っていない。

そこでPrieto-Alhambra氏らは、英国とスペインのプライマリケア診療の記録を用いて、新型コロナワクチンの接種、COVID-19罹患、免疫介在性神経疾患の発症との関連を検討した。対象者は、アストラゼネカ社製、ファイザー社製、米モデルナ社製、または米ジョンソン・エンド・ジョンソン社製のいずれかの新型コロナワクチンを1回以上接種した833万497人と、RT-PCR検査で新型コロナウイルス陽性の判定を初めて受けた新型コロナワクチン未接種者73万5,870人。対象とする免疫介在性神経疾患は、ベル麻痺(顔面神経麻痺の一種)、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎の4種類とした。また、一般集団からも1433万80人を選び出し、COVID-19パンデミック以前のこれらの神経疾患の自然発生率を推定した。免疫介在性神経疾患の罹患率は、新型コロナワクチンの1回目接種後21日時点、新型コロナウイルス陽性の判定後90日時点で、一般集団での自然発生率は2017〜2019年の期間で推定した。

その結果、ワクチン接種後の罹患率は、ベル麻痺、脳脊髄炎、およびギラン・バレー症候群については、一般集団での自然発生率と一致することが明らかになった。横断性脊髄炎については、ワクチン接種者全体での発生件数が5件を下回っていたため、解析できなかった。しかし、COVID-19罹患後では、ベル麻痺、脳脊髄炎、およびギラン・バレー症候群の罹患率は、研究チームが想定していたよりも高かった。例えば、英国のデータに基づくと、COVID-19罹患者での標準化罹患比は、ベル麻痺で1.33(95%信頼区間1.02〜1.74)、脳脊髄炎で6.89(同3.82〜12.44)、ギラン・バレー症候群で3.53(同1.83〜6.77)であった。

こうした結果を受けてPrieto-Alhambra氏は、「今回対象とした4種類の免疫介在性神経疾患については、新型コロナワクチン接種後にその発症リスクが高まり得るという危険信号は確認されなかった。しかし、新型コロナウイルスへの感染と、ベル麻痺、脳脊髄炎、およびギラン・バレー症候群のリスク増加との間には関連が認められた」と結論付けている。その上で、「神経学的障害を引き起こす原因を特定するのは無理かもしれないが、新型コロナワクチンの接種がその原因である可能性はほぼないといっても過言ではない」との見方を示している。(HealthDay News 2022年3月17日)

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