米国では、前立腺特異抗原(PSA)の定期的な検査に基づく前立腺がんのスクリーニングが推奨されなくなって以降、転移性前立腺がんの症例が厄介なレベルで増加しているという研究結果が報告された。米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校のMihir M. Desai氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月14日掲載された。

PSA検査は、前立腺に特異的なタンパク質の一種であるPSAの値を血液検査により測定するもので、高値ほど前立腺がんである確率が高くなる。米国では、定期的なPSA検査がほぼ30年前に開始され、転移性前立腺がんの症例と前立腺がんによる死亡件数の双方が減少した。しかし、PSA検査の定期的な実施により、低リスク前立腺がんの過剰診断と過剰治療のリスクも上昇した。

こうした事態を受け、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、まず2008年に75歳以上の男性の定期的なPSA検査を非推奨とし、次いで2012年には非推奨の対象を、年齢を問わず全ての男性に拡大した。この非推奨はその後、2018年に再び修正され、55〜69歳の男性は必要に応じてPSA検査について医師と話し合うべきとされた。

Desai氏らは今回、米国でのがんの罹患率や生存率、死亡率などに関するデータベースであるSurveillance Epidemiology and End Results(SEER)のデータを用いて、このようなUSPSTFのPSA検査に関する推奨の前後での転移性前立腺がんの罹患率の変化を調べた。対象期間は2004年1月1日から2018年12月31日までとし、データから前立腺がんの診断を受けた45歳以上の男性を特定した。

その結果、この期間内に83万6,282人が前立腺がんの診断を受けていたことが判明した。これらのうち、45〜74歳では2万6,642人、75歳以上では2万507人が転移性前立腺がんだった。45〜74歳での転移性前立腺がんの10万人当たりの罹患率は、2004年(11.58例)から2010年(11.83例)の間で一定していたが〔年平均変化率(APC)−0.4%、P=0.60〕、それ以降、2018年には17.30例にまで有意に増加した(APC 5.3%、P<0.001)。一方、75歳以上では、2004年の67.26例から2011年の58.14例へと有意に低下した後(APC −1.5%、P=0.046)、2018年には88.97例へと有意に増加した(APC 6.5%、P<0.001)。

Desai氏は、「この研究は、最新の人口データセットを用いて、転移性前立腺がんが継続的に増加していることを示した初めての研究だ」と述べる。そして、「前立腺がんは、通常はスクリーニング検査により早期発見されることが多く、早期であれば、治療が可能だし、治癒する可能性もある。そのため、今回の研究で得られた知見は、男性に大きな影響を及ぼすものだ」と付け加えている。

研究論文の共著者である、同医学校のGiovanni Cacciamani氏は、「この知見は、政策決定の影響を絶えず再評価する必要性を示唆するものであり、非常に重要な意味を持つ。PSA検査に関する政策決定を見直さない限り、前立腺がんの罹患率は今後も増加し続ける可能性がある」と述べる。

研究グループは、「定期的なPSA検査をやめる理由は、今や時代遅れになっている可能性がある」との見方を示す。この点について、研究論文の上席著者であるUSC泌尿器科学研究所の常務理事Inderbir Gill氏は、「臨床的に重要ながんは、バイオマーカーやMRIを用いた、より洗練された方法で検出されることが増えている。また、低〜中リスクのがんに対しては、積極的なサーベイランスで対応することが増えているため、過剰治療のリスクは以前ほど高くはない」と説明している。(HealthDay News 2022年3月16日)

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