長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに終止符を打つための切り札として、一部の専門家の間で吸入型ワクチンの開発に期待が寄せられている。吸入型ワクチンは、より少ない用量で、より効果的に人々を新型コロナウイルスから守ることができるため、世界のより多くの人々にワクチンを行き渡らせることができる可能性を秘めているのだという。そんな吸入型ワクチンの開発に関する報告を、マクマスター大学(カナダ)Michael G. DeGroote感染症研究所のMatthew Miller氏らが、「Cell」に2月8日発表した。

報告された吸入型ワクチンは、ヒト、またはチンパンジー由来のアデノウイルスベクターを用いたもので、3種類の新型ウイルス抗原〔スパイクタンパク質のS1領域、全長ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)〕を発現させる。Miller氏らは既にマウスを用いた研究で、この吸入型ワクチンの安全性と強力な免疫応答の誘導について確認していた。この結果に基づき、研究グループは同ワクチンの第1相臨床試験を開始。新型コロナウイルスのmRNAワクチンを2回接種した健康な成人を対象に、同吸入型ワクチンによる免疫増強効果について検討している。

この吸入型ワクチンは、液状の薬剤を霧状に変える「ネブライザー」と呼ばれるデバイスを使って口から吸入して肺まで届ける。Miller氏は、「肺の免疫系に刺激を与えた場合に得られる免疫の質は、一般的な筋肉注射によるワクチン投与で刺激した場合に得られる応答とは本質的に異なる」と説明する。

注射によるワクチン接種の有効性は証明済みではある。しかし、Miller氏によると、新型コロナウイルスのような呼吸器系ウイルスに対して最も強い防御効果が求められる部位である鼻や肺で抗体が作られるには、誘導された免疫応答が全身を循環する必要があるのだという。

それに対して、「吸入型ワクチンにより誘導される免疫応答は、新型コロナウイルスなどの病原体への曝露に備えて肺に待機している細胞が動員されるため、より強力だ」とMiller氏は強調する。そのほかにも吸入型ワクチンには、「新型コロナウイルスが最も大きなダメージをもたらす肺の奥深くでも免疫応答を誘導できる」ことや、「これまでよりも少ない量のワクチンで従来と同程度の効果が得られる」といったメリットがあると同氏は話す。その上で同氏は、「1回当たりのワクチンの使用量が減ればワクチン不足の状態に陥らずに、より多くの人々に接種できる可能性がある」と期待を示している。

一方、米イェール大学のグループも、鼻から噴霧するタイプのワクチン(経鼻スプレーワクチン)が、mRNAワクチン接種済みのマウスにおいて、鼻と喉の免疫記憶細胞と抗体を増加させたとする動物実験の結果を、査読前の論文投稿サイトである「bioRxiv」で1月26日に報告している。「現在使用されているワクチンのプラットフォームをベースに粘膜免疫を得られるよう改良することは、現在だけでなく、次のパンデミックに立ち向かうためにも重要だ」と同大学の研究グループは述べている。

Miller氏は「ワクチン設計において、吸入型ワクチンは次なる重要なイノベーションとなるだろう。また、毎年の季節性ワクチンの平均的な有効性が十分とはいえないインフルエンザなど、新型コロナウイルス以外の呼吸器感染症に対するワクチンの防御効果の向上にもつながる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2022年2月15日)

https://consumer.healthday.com/2-14-are-inhaled-va…

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写真:研究グループの1人Michael D’Agostino氏が吸入型ワクチンでの接種を実演する様子。
Photo Credit: McMaster University

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