新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に、心血管イベントリスクが上昇することを示唆する新たなデータが、「Nature Medicine」に2月7日掲載された。COVID-19罹患後の少なくとも1年間は、ハイリスク状態が続くという。
論文の上席著者である米ワシントン大学のZiyad Al-Aly氏は、「COVID-19罹患前から心血管系にリスクのあった人は、罹患後にイベントリスクが上昇することが確認された。しかし、最も注目すべきことは、心血管疾患の既往がない低リスク者もイベントを起こしていることだ」と述べている。同氏によると、このような傾向は、年齢、人種/民族、肥満や糖尿病の有無、COVID-19の重症度にかかわらず認められるとのことだ。
Al-Aly氏らの研究は、米国退役軍人省の医療データを用いて行われた。2020年3月1日~2021年1月15日(ワクチン接種完了者がまだわずかであった時期)にCOVID-19に罹患し、30日後に生存していた15万3,760人のCOVID-19罹患後1年間の経過を、以下のCOVID-19非罹患者の2群と比較。対照の1群は、前期と同期間に受療行動の記録のある563万7,647人、もう1群は、COVID-19パンデミック以前の2017年に受療行動の記録のある585万9,411人。
リスクの比較に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、BMI、喫煙習慣、入院/外来患者の比、地理的剥奪指標、がん・慢性肺疾患・慢性腎臓病・糖尿病・高血圧・脂質異常症・認知症などの基礎疾患、血圧、eGFRなど)を調整した。
解析の結果、心不全や心血管死などを含め、評価した全てのアウトカムの発生率が、COVID-19罹患者では非罹患者に比較し約4パーセントポイント高いという差の存在が明らかになった。この結果に関してAl-Aly氏は、ワシントン大学発のプレスリリースの中で、「4パーセントポイントという差はわずかだと考える人もいるかもしれない。しかし、パンデミックの規模を考えるとそうとは言えず、米国人COVID-19罹患者のうちの約300万人に相当する」と、インパクトの大きさを解説している。
評価したアウトカム別に見ると、COVID-19非罹患者に対し罹患者は、冠状動脈疾患のハザード比(HR)が1.72(95%信頼区間1.56~1.90)、心筋梗塞がHR1.63(同1.51~1.75)、脳卒中がHR1.52(同1.43~1.62)だった。また、心筋梗塞、脳卒中、全死亡で構成されるMACE(複合主要心血管イベント)は、HR1.55(同1.50~1.60)だった。
パンデミックが始まって以来、世界中で3億8000万人以上がCOVID-19に罹患していることから、Al-Aly氏は、「これまでに世界中で1500万人が、COVID-19罹患後に心疾患を発症した可能性がある」と推測。その上で、「これは非常に重要な問題であり、COVID-19急性期を脱した後のケアにおいて、心疾患への対応が不可欠であることを示している」と述べている。また同氏は、「本研究の結果は、心臓のダメージを防ぐ方法として、ワクチン接種を受けることの重要性を浮き彫りにしている」と付け加えている。
なお、「long COVID」と総称されるCOVID-19後遺症では、心臓の問題だけでなく、さまざまな症状が生じることが報告されている。(HealthDay News 2022年2月10日)
https://consumer.healthday.com/covid-and-heart-265…
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