副反応が軽減された国産の新型コロナワクチン開発に向け探索

熊本大学は2月8日、新型コロナワクチン接種に関する臨床研究を行い、ワクチン副反応と関連するバイオマーカーを発見したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部免疫学講座の押海裕之教授、小児科学講座の中村公俊教授、皮膚病態治療再建学講座の福島聡教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「NPJ Vaccines」に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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感染症予防には、ワクチンによる予防接種が非常に有効だが、アレルギー体質であったり副反応に不安があったりと、予防接種をためらう人も一定数いる。副反応には個人差があるが、その個人差の原因を明らかにすれば、副反応の軽減された国産の新型コロナワクチンの開発につながることが期待される。そこで今回の臨床研究は、新型コロナワクチンの副反応の個人差に関連する体内の成分()を発見することを目的として実施された。

ワクチン副反応の原因となる免疫応答は少なくとも2種類

研究グループは、2021年に熊本大学病院で実施された医療従事者向け新型コロナワクチン接種(1回目と2回目のワクチン接種)において、被接種者の血液の成分や、ワクチン接種後の副反応、ワクチン接種後の抗体価などについて測定。その結果、まず、これまで報告されている通り、今回の臨床研究でも2回目のワクチン接種での副反応は、1回目よりも強いことがわかった。

続いて、それぞれの副反応について調べると、ワクチン接種をした部位での痛み、腫れ、赤みなどの症状(局所の副反応)は、1回目で強かった人は、2回目でも強い傾向がみられた(相関した)のに対して、疲れ、発熱、悪寒などの全身症状(全身の副反応)の程度は1回目と2回目で異なる人(相関しない人)が多くいた。このことから、ワクチン副反応の原因となる免疫応答には少なくとも2種類あることが推測された。

接種後のTNF-α、接種前のmiR-92a-2-5pがバイオマーカーに

炎症性サイトカインとして知られるIL-6やTNF-αは、免疫細胞などに働きかけるタンパク質で、副反応の原因となることが過去のインフルエンザワクチン接種などで指摘されている。これらを新型コロナワクチン副反応の程度と比較すると、血液のTNF-αの値が高くなるにつれて、副反応の全身症状も強くなることが示唆された。TNF-αはT細胞から分泌されることが知られているので、T細胞の働きが強くなることで副反応の全身症状が強くなると考えられる。

次に研究グループは、血液中に流れている細胞外小胞に含まれるマイクロRNAに着目。細胞外小胞は直径100nmほどの小胞で(ウイルスなどとほぼ同じ大きさ)、同研究グループの以前の研究では、細胞外小胞に含まれるマイクロRNAが、インフルエンザワクチンの副反応と関連することを報告している。

被験者61人についてワクチン接種の前日に採血し、その血液中の細胞外小胞内マイクロRNA量を測定して、それをワクチン副反応の程度や抗体価と比較した。その結果、miR-92a-2-5pと呼ばれるマイクロRNAの量が少ないと、ワクチン接種場所の赤みや、あるいは頭痛、関節痛が強くなることを発見した。この他にも、miR-148aと呼ばれるマイクロRNAが、ワクチン接種1か月後の抗体の量と関連することなども発見した。

副反応軽減ワクチンの開発や不安軽減などに期待

今回の臨床研究から、ワクチン接種後の血液中のTNF-αや、ワクチン接種前の特定のマイクロRNAがワクチン副反応の強さと関連するバイオマーカーとなることが示唆された。今後は、今回発見したバイオマーカーの値を改善する薬剤を開発したり、それを含む新型コロナワクチンを作製したりすることで、副反応の軽減されたワクチンの開発につながることが期待される。また、副反応についてより正しく理解できることで副反応への不安も軽減されることが期待される。(

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