新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株は、免疫を回避する能力が高いと考えられているが、T細胞から逃れることは困難であるとする予備的な研究の結果が報告された。メルボルン大学(オーストラリア)のMatthew McKay氏らによるこの研究の詳細は、「Viruses」に1月2日掲載された。

新型コロナウイルスへの感染は、ウイルス表面のスパイクタンパク質がヒトの細胞表面にある受容体と結合して、ウイルスの遺伝子がヒト細胞の中へ移行することで成立する。現行のワクチンは、ワクチン接種により誘導された中和抗体で感染を阻止するよう促すものだ。しかし、オミクロン株はスパイクタンパク質に多くの変異を有するため、ワクチンによる予防効果が低いことが示唆されている。

今回のMcKay氏らの研究では、スパイクタンパク質に特異的な224個のCD8陽性T細胞エピトープと、167個のCD4陽性T細胞エピトープについて、オミクロン株の変異部位が含まれているかどうかを調べた。T細胞エピトープとはT細胞受容体と結合する抗原領域のことである。

その結果、CD8陽性T細胞エピトープの14%(32/224個)、CD4陽性T細胞エピトープの28%(47/167個)が、オミクロン株の変異に関わる部位を1つ以上持っていることが明らかになった。このことは、これらのエピトープの大部分(CD8陽性T細胞エピトープの86%、CD4陽性T細胞エピトープの72%)が、オミクロン株の変異とは無関係であることを意味する。さらに分析を重ねた結果、変異を含むエピトープであっても、T細胞を必ず回避できるわけではないことも判明した。この点について、研究論文の共著者で香港科技大学教授のAhmed Abdul Quadeer氏は、「オミクロン株関連の変異を有するT細胞エピトープのうち半数以上は、T細胞により認識され得ることが明らかになった。これにより、オミクロン株がT細胞を逃れる確率はさらに低くなる」と述べている。

さらに、新型コロナウイルスの非スパイクタンパク質に由来するT細胞エピトープを分析すると、CD8陽性T細胞エピトープの98%、CD4陽性T細胞エピトープの95%でオミクロン株関連の変異は認められなかった。

こうした結果についてMcKay氏は、「以上の結果は、オミクロン株のT細胞からの回避は起こりにくいことを示唆する。得られたデータに基づけば、ワクチンやブースター接種によって誘導されたT細胞の応答は、他の変異株と同様にオミクロン株に対しても有効であると期待できる」と述べている。

さらにMcKay氏は、「予備的な研究ではあるが、これは明るいニュースと言える。オミクロン株やその他の変異株が抗体をすり抜ける可能性があるとしても、T細胞の応答が確かな防御力を発揮し、重症化予防に役立つ可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2022年1月5日)

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