従来法より精度の高い予後予測アルゴリズムの開発

京都大学は12月28日、新規の造血幹細胞移植予後予測モデルを開発したことを明らかにした。この研究は、同大大学院医学研究科の高折晃史教授、諫田淳也同助教、岩﨑惇同研修員、ネクスジェン株式会社の中島正和氏、宮西正憲氏、宮塚功氏、Le My An氏らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Blood Advances」オンライン版に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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造血幹細胞移植領域での予後予測には、Cox回帰分析などの統計学的手法が用いられてきた。近年、機械学習を基にした手法が開発されてきており、ゲノム情報等の新しい因子も含めて、多数の因子が関与する造血幹細胞移植の予後予測に有用性が示されている。しかし、従来の方法と比較して予測精度を高める手法の開発は十分に進んでいない。そこで研究グループは、従来法より精度の高い予後予測アルゴリズム開発を目的としてプロジェクトを立ち上げた。

全生存、再発、GVHD、GRFSで優れた予測精度

従来、予後予測に用いられてきた統計学的手法、並びに既存の機械学習手法で得られた予測モデルを、アンサンブル学習を用いて融合し、新たな予測モデルを開発した。京都大学血液内科関連病院の移植データを用いた解析で、同モデルは従来の手法と比較し、全生存、再発、GVHDといった個別の予後に加えて、上記を考慮した重篤な病的状態を伴わない生存の指標であるGVHD-free, Relapse-free Survival (GRFS)、いずれの予後においても優れた予測精度(C-index)を示した。

今後、全国・海外データを含めた解析等により洗練された予測モデルの構築へ

多数の因子を基に正確な予後予測ができることは、個々の患者に適した移植方法を提供する個別化医療の実現に貢献することが期待される。また、研究グループでは、ウェブツールの開発も並行して進めており、研究で得られたモデルから移植後の予後を臨床の現場で予測し活用していける準備も整えているという。

今回の研究は京都大学関連病院の症例に限って解析が実施された。しかし、日本国内でも施設によって移植方法に違いはあり、近年新たな治療法の開発・普及に伴い、ドナー選択を始めとした移植方法も変化してきていることから、今後の方向性として、より実臨床に最適化したモデルにしていくことが必要だとしている。「全国のデータ、あるいは海外のデータも含めた解析、さらには実際に臨床の現場で応用した内容を前向きに同研究で得られたアルゴリズムに学習させることで、より洗練された予測モデルの構築につながる」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部

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