これまでの新型コロナウイルス変異株と比べると、オミクロン株は現時点では感染した場合の重症化リスクが低いと見られている。しかし、この変異株に対する米ファイザー社製のワクチンの発症予防効果は従来の株よりも低いとする研究結果を、南アフリカ最大の健康保険会社であるディスカバリー・ヘルスの研究グループが12月14日プレス発表した。
オミクロン株は2021年11月に南アフリカで最初に特定され、その後ほどなくして世界保健機関(WHO)により「懸念される変異株」に指定された。南アフリカでは、それまで流行していたデルタ株に代わってオミクロン株が急速に広がり、新規感染者の90%を占めるまでになったという(パンデミック第4波)。
研究チームは今回、南アフリカで実施された新型コロナウイルスの検査の結果21万1,000件以上について分析を行った。これらの検査結果の41%はファイザー社製ワクチンを2回接種した成人のものであり、また約7万8,000件は、オミクロン株の感染が急増した2021年11月15日から2021年12月7日の間に判明した結果だった。
その結果、ファイザー社製ワクチンを2回接種した場合でも、第4波初期におけるワクチンの感染予防効果は33%にとどまり、他の変異株に対する感染予防効果よりも大幅に低下することが明らかになった。また、同ワクチンを2回接種した場合の入院予防効果は70%であることも判明した。研究グループはこの結果について、「デルタ株が流行したときの同ワクチンの入院予防効果は93%だったので、低下してはいるが、十分な効果があるといえる範囲だ」との見方を示している。
これに対して、米国の非営利研究施設であるスクリプス研究所のEric Topol氏はUSA Today紙に対して、「入院予防効果が70%というのは明らかな低下であり、十分とは言えない。また、さらに多くのオミクロン株感染者を対象に調査しても、この70%という数字が維持されるのかどうかも不明だ」と懸念を示す。
今回の研究ではこの他にも、18歳未満の若年者がオミクロン株に感染した場合には、D614G変異を持つ欧州株が流行した第1波に比べて合併症による入院リスクが20%上昇することも判明している。ディスカバリー・ヘルスのCEOを務めるRyan Noach氏は、「現段階で心強いのは、入院率の推移が比較的平坦なことだ。このことは、第4波の重症化率が低いことを示唆している」と述べている。それでも同氏は、「とはいえ、オミクロン株が感染拡大を続ければ、南アフリカの医療システムが逼迫する可能性はある」と警戒を示している。
Noach氏は、「第4波での新規感染者の増え方は、これまでの波よりも急激だ。国のデータから、第4波の最初の3週間で、新規感染者および陽性率の双方が指数関数的な増加を示している。つまり、オミクロン株は感染力が高いため、感染が急速に拡大しているということだ」と指摘している。(HealthDay News 2021年12月14日)
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