新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症に長期にわたって悩まされている患者の多くに、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ばれる消耗性の疾患やその他の呼吸器障害が生じていることが明らかになった。米マウント・サイナイ医科大学教授のDonna Mancini氏らが実施したこの研究の詳細は、「JACC: Heart Failure」12月号に掲載された。
ME/CFSは医学的に解明されていない病態で、重度の疲労により少なくとも6カ月以上、通常の日常活動が制限されるのが特徴だという。Mancini氏は、「ME/CFSの症状はたいていの場合、曖昧だ。例えば、睡眠をとっても解消されない疲労感や運動後の不調、ブレインフォグ(頭に霧がかかったような状態)、めまい、筋肉痛、喉の痛みなどだ」と説明する。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では80万~250万人がME/CFSに悩まされており、全体の約3分の1はウイルス性疾患罹患後に発症するという。
今回の試験では、23~69歳のCOVID-19罹患後症候群(PASC)患者41人(平均年齢45±13歳、女性23人、男性18人)を対象に、まず、過去半年間に、疲労により日常生活や仕事、学校での勉強が障害された程度、関節拘縮やリンパ節の圧痛、頭痛、筋肉痛、睡眠障害、集中困難、軽度の労作後の症状悪化が生じた頻度についてインタビュー形式での調査を行い、ME/CFSの有無に関する評価を行った。次いで、サイクリングマシンを用いた心肺運動負荷検査(CPET)を行い、安静時と運動時の心電図、動脈血酸素飽和度、血圧、呼気やその他の換気指標を評価した。対象者がCOVID-19の初回診断を受けてから今回の研究で検査を受けるまでの期間には、3カ月から15カ月の幅があり、いずれの対象者にも原因不明の息切れが続いていた。
インタビューによる調査から、対象者のほぼ半数(46%)がME/CFSの基準を満たすことが明らかになった。一方、CPETからは、対象者の88%に呼吸機能不全が生じていることが判明した。また、安静時および運動時の呼気二酸化炭素濃度の低さから、過呼吸が慢性化している可能性が疑われた。さらに、対象者の58%に、運動パフォーマンスのピーク時に、心機能障害や、肺灌流や末梢灌流の異常により循環障害が起きていることを示すエビデンスが認められた。
こうした結果を受けてMancini氏は、「これらの結果は、COVID-19後遺症患者の一部では、過呼吸や呼吸機能不全が原因となって後遺症が生じている可能性のあることを示唆するものだ。このような問題は呼吸再訓練で対処できるため、この知見は重要だ」と話す。
この研究結果をレビューした米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のColin Franz氏は、入院を必要としなかったCOVID-19患者の0.5~1%に少なくとも1つの長引く症状が現れることを指摘し、「世界の罹患者数を考えれば、その数は膨大だ」と述べている。同氏は、軽症のCOVID-19患者にも後遺症が現れるという見解に当初は懐疑的であったが、「COVID-19後の臨床リハビリプログラムに関わる中で、軽症患者であっても後遺症は珍しくない問題であると確信するに至った」と話している。(HealthDay News 2021年11月30日)
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