米国では、1971年にがん撲滅を目標とする「米国がん対策法」が施行されてから、今年で50年の節目を迎えた。この間、がんによる死亡率は、多くのがん種で急落したものの、一部のがん種では逆に増加したことが、米国がん協会(ACS)のAhmedin Jemal氏らにより、「JAMA Oncology」で11月11日報告された。

この報告書によると、1971年以降、がん全体の死亡率は低下している(10万人当たりの死亡率は、1971年で198.9人、2019年で146.0人、率比0.73)。また、1971年に、死亡率の上位15位までにランクインしていたがん種のうちの12種(80%)についても、2019年には死亡率が低下していた。例えば、肺がんによる死亡率は、1971年と比べると13%(率比0.87)、1993年のピーク時と比べると44%(率比0.56)減少していた。これとは逆に、膵臓がん、食道がん、脳腫瘍の死亡率は、1971年よりも上昇していた(率比は順に、1.03、1.08、1.08)。

Jemal氏は、「がんの予防、早期発見、および治療向上のための出資が増加されたことを受けて死亡率は改善されつつあるが、改善の度合には依然として格差がある」と指摘する。死亡率改善に見られる差には、がんの種類によるだけでなく、地理的要因も関わっている。実際、米国南部でのがんによる死亡率は、他の地域よりも高い。この点について同氏は、「南部の人の多くは貧しく、質の高いケアを受けることができない。また、メディケイド加入患者を受け入れている医師を探すのが困難なことも考えられる」と説明している。

報告書では、がんの全体的な死亡率の低下に寄与している要因の1つとして禁煙が挙げられている。また、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、および前立腺がんによる死亡率低下は、部分的には早期発見によるものだとしている。

米ハーバード大学医学部放射線腫瘍学教授のAnthony D’Amico氏は、「最大の改善は、医師がスクリーニングするがんで認められたが、その一方で治療の進歩も大きく貢献している」と話す。そして、「特に、胃がん、白血病、卵巣がんでの死亡率改善には、治療の進歩が関連していると思われる。また、肺、乳房、前立腺、大腸のがんにおける死亡率改善にも、スクリーニング検査だけではなく、治療の進歩が寄与している」と説明する。

死亡率低下に貢献した可能性のある別の要因として、報告書では、医療保険制度の改革により、無保険だった多くの米国人が、がん治療にアクセスしやすくなったことが挙げられている。その一方で、特に米国南部では、肥満や喫煙といったライフスタイルに関わる因子が原因で、一部のがんの発生率が、想定よりも高くなっているとJemal氏は指摘する。その上で同氏は、「がんによる死亡率の純然たる低下を望むのであれば、健康の社会的決定要因に焦点を当てた上で、がんの予防と管理に対する投資を増やす必要がある」と主張する。

一方、米ノースウェル・ヘルスがん研究所のLouis Potters氏は、「この50年でがんによる死者数は大幅に減少した。しかし、さらに減らすことができるはずだ」と述べ、「この50年の間に開発されてきた、がんリスクを早期に特定するためのDNAフィンガープリント法や、早期発見のためのさまざまな新しいアプローチ、そして治療の進歩を礎にすれば、がん患者やがんリスクのある患者に対するケアの質と生活の質の双方を向上させることができるだろう」との見方を示している。(HealthDay News 2021年11月11日)

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