出産時に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していた母親が母乳育児をすることで、乳児の新型コロナウイルスに対する免疫応答が高まる可能性のあることが明らかになった。Bambino Gesù Children’s Hospital(イタリア)のRita Carsetti氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月3日掲載された。

乳児は母親から、胎盤と母乳を介して抗体を受け取る。母親から与えられたこの受動免疫のおかげで、乳児が生後6カ月頃までは感染症にかかりにくいことはよく知られている。母乳がもたらすこのような保護効果は新型コロナウイルスに対しても例外ではなく、COVID-19の罹患歴がある母親やCOVID-19のワクチンを接種した母親の母乳には、新型コロナウイルスに対する抗体が含まれていることが、過去の研究で明らかにされている。しかし、胎児期に新型コロナウイルスに曝露した乳児の生後の免疫応答に関する報告は、いまだ公表されていない。

そこでCarsetti氏らは、出産時にCOVID-19に罹患していた母親とその子ども28組を対象に、出産から48時間後と生後2カ月時の全身免疫と粘膜免疫を評価し、それらの特徴を明らかにすることを試みた。全身免疫については、母親と胎児の血清中の新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に特異的なIgG抗体とIgA抗体、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインに特異的なIgM抗体の有無により評価した。また粘膜免疫については、母乳中と乳児の唾液中のIgG抗体とIgA抗体、母乳中のスパイクタンパク質とIgA抗体が結合した抗原抗体複合体の有無により評価した。

28組中21組の母子が、出産から2カ月後の追跡調査を完了した。誕生直後に新型コロナウイルス陽性が判明し、垂直感染が疑われた乳児は1人だけだった。生後2カ月での唾液中の抗体レベルを、母乳で育てられていた乳児と粉ミルクで育てられていた乳児とで比較したところ、前者で、スパイクタンパク質に特異的なIgA抗体のレベルが有意に高いことが明らかになった(0.99AU対0.16AU)。また、母乳中の抗原抗体複合体のレベルを、COVID-19の急性期に当たる出産の48時間後と出産の2カ月後で比較したところ、前者の方が有意に高かった(0.53AU対0.09AU)。

こうした結果を受けてCarsetti氏は、「この研究により、母乳を介して抗原抗体複合体が乳児に移行し、それが乳児での免疫応答を誘導している可能性のあることが初めて示された」と話している。ただし、乳児の唾液中に検出された抗体が、新型コロナウルスに曝露した際に乳児を発症から守る特別な効果を持つことが示されたわけではない。

米ノースウェスタン大学小児科教授のTina Tan氏は、「乳児の唾液中の抗体が、目や鼻から侵入したウイルスから身を守るのに役立つ可能性はある」と話す。また同氏は、「新型コロナウイルスから身を守るための抗体を母親からその子どもへ移行させる最良の方法は、妊娠中に母親がワクチンを接種することだ。ワクチン接種により作られた抗体は、胎盤を介して胎児の血液に入り込む」として、妊婦のワクチン接種を勧めている。

Carsetti氏によると、現在、今回の研究結果を検証し、またワクチンを接種済みの母親から生まれた乳児において、新型コロナウイルスに対する能動免疫が働くのかどうかを調べる研究が進行中であるという。(HealthDay News 2021年11月4日)

https://consumer.healthday.com/11-4-breastfeeding-…

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